明神塾5回レジュメ
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「江戸食文化と江戸文芸」
・第5回 江戸の茶と和菓子
〜日本橋の御用達商人〜
2015年10月21日
安藤優一郎
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◆本講座の趣旨 |
日本文化の源流は江戸時代にさかのぼると言っても過言ではないでしよう。今期は食と文芸をテーマとしたミニ講座に加えて、タイトルにちなんだゲストとの対談を通じ、皆さんを魅力あふれる江戸文化の世界にいざないます。
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はじめに |
お茶は飲み物として日々欠かせませんが、セットで出されることの多い和菓子も江戸では人気の食べ物でした。お茶と和菓子の巨大マーケットについて概観します。
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1.江戸のお茶
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(1)茶の湯の歴史
平安時代には畿内で茶の栽培〜喫茶の習慣は民間には普及せず/寺院内で飲まれる。
薬用茶として上流階級の飲み物/禅僧栄西の『喫茶養生記』が普及の契機〜抹茶/室町末期以降、茶の湯が武家にも広まる/茶会で茶の品質の優劣を競った闘茶の登場/千利休と茶道/古田織部・織田有楽斎などの大名茶人登場
(2)茶の大衆化(図@)
江戸初期には路上で一服一銭で茶が売られる/清涼飲料水的な葉茶が広く飲まれる/山城・丹波・大和・伊勢が茶の産地/当時の煎茶は薬缶で煎じて飲む〜番茶に近い/女性が好んで茶を飲む〜取締対象になったほどに日常的な飲料水/宇治茶などの高級茶も生まれる〜将軍への献上茶に。御茶壺道仲/玉露茶〜6代目山本嘉兵衛(山本山)が発明
(3)多彩な喫茶法(図A)
食後の一服のほか、菓子・漬け物・梅干しを茶請けとした食間の場で飲む/茶漬け、奈良茶飯に利用/水茶屋での品目/麦茶・昆布茶・柿茶なども飲まれる
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2.江戸の和菓子 |
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(1)江戸以前のお菓子の歴史
縄文クッキー〜栗・胡桃を砕いたものに卵を繋ぎ合わせて焼く/古代の宮中では索餅(小麦粉と米の粉で練り縄の形にねじって油で揚げる)などの唐菓子が食される/鎌倉時代に羊羹や饅頭登場/戦国時代には金平糖・カステラなどの南蛮菓子が渡来/京都を中心に広まった茶の湯が菓子発展の要因/京菓子屋による上菓子の製造〜公家社会の需要
(2)武家社会の儀式と菓子
江戸城を核とする五節句の儀式〜諸大名総登城/上巳の節句〜雛菓子と草餅/端午の節句〜柏餅/6月16日の嘉祥の日〜16個の菓子を供えて無病息災を祈る。現在和菓子の日/当日、諸大名は江戸城に登城して菓子を拝領〜総計2万個以上/諸大名は屋敷に戻ると、拝領の菓子を家臣たちに下賜してお祝いをするのが定め/玄猪の日(10月最初の亥の日)に亥の子餅(大豆、小豆、大角豆、胡麻の粉などを合わせて作ったもの)を食べて無病息災を祈る/当日、諸大名は江戸城に登城して菓子を拝領〜家臣に下賜してお祝いをする
(3)江戸の名物菓子(図B)
寺社門前の名物菓子/将軍吉宗による隅田川堤への桜の植樹から長命寺桜餅誕生/長命寺の門番が桜の葉を塩漬けし、その葉で餡入りの餅を挟んで販売し人気を博す/文政7年(1824)、塩漬けされた桜の葉が77万5000枚〜当時は餅1つに桜の葉を2枚→年間38万7500個の桜餅が製造(曲亭馬琴「兎園小説」)
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3.江戸屋敷という社交空間 |
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(1)将軍御成と江戸屋敷
江戸は大名屋敷街/将軍御成の政治的意義/江戸初期は茶会、式三献、献酬(固めの盃)、進物献上、能興行、七五三の膳という接待/主従の固めから遊興の場へ
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(2)茶会の盛行
将軍から茶器拝領/御成時の茶室や書院には京風の文物が飾られる/御成のほか、幕閣を招いて茶会開催/大名同士の交際で茶会を催す/赤穂浪士討ち入り直前の吉良邸での茶会/江戸の武家社会における茶菓子の大消費〜寺院や商人社会でも
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4.多様な御用商人たち |
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(1)日本橋は御用商人の街
江戸城で消費される生活物資/上方などから商人を誘致〜将軍家御用達/日本橋の造成/参勤交代制度後、大名屋敷内で消費される生活物資という市場〜諸大名御用達/御用達というブランド〜大名の格差も反映/寛永・増上寺など巨大寺院の御用達/食糧品、武具・馬具、呉服などの衣料品、畳や箪笥などの調度品〜畳替えの需要/火事という特需
(2)御茶御用の拡大
日本橋の山本嘉兵衛は宇治茶を扱う商人/元禄3年(1690)に江戸出店/文化13年(1816)に将軍家、一橋家御用達。文政13年(1830)に田安、清水家御用達、寛永寺御用達開始
(3)多彩な和菓子御用(図C)

日本橋本石町の菓子屋金沢丹後掾〜将軍家、諸大名数十家、寛永寺・増上寺などの御用達/諸大名が将軍より拝領する菓子を調達/江戸屋敷が類焼した大名への見舞いとして将軍が下賜する白飯を調達/本丸御殿再建時の振舞いとして関係者に下賜した赤飯3万人分を調達〜下請け・孫請け業者の存在/将軍家御台所が寛永寺・増上寺に参詣する時は4〜5万石の饅頭の注文が幕府より入る/蕎麦・餅も調達
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